[第1期レビュー]木ノ浦ビレッジ

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能登半島の最先端の地、さいはてと呼ばれる珠洲市で、体験宿泊型施設「木ノ浦ビレッジ」を運営しています。完全独立型のコテージ8棟や研修棟に加えて、施設内にはカフェやお土産売り場を併設しているほか、ピザ焼きなどの体験設備も整っています。また屋外では、冬はノルディックウォーキング、夏は穏やかな内浦を楽しめるカヤックなど、国定公園の自然を生かしたこの地域だからこそ味わえる体験を楽しむことができます。

木ノ浦ビレッジ
代表社員 社長 山口侑香


1992年 珠洲市生まれ。高校卒業後に金沢市のエネルギー関連会社勤務を経て、2014年に珠洲市に U ターン。
長女出産後に同市の小売会社に勤務し、その後、2019年に木ノ浦ビレッジに就職しました。
2020年には統括マネージャーに就任し、TANOMOSHIでの取り組みを通して、当時の代表社員(足袋抜さん)からの事業承継にチャレンジ。2021年11月26日に「代表社員 社長」に正式就任しました。

前代表社員   足袋抜 豪


珠洲市出身、在住。水中写真家、ダイビングインストラクター、農家など様々な顔を持っています。
地元への貢献をミッションとしており、自然と地域内外をつなぐコーディネーター(中間支援)の役割を果たしているほか、珠洲市での起業やビジネス立ち上げの仕掛け人役でもあり、それらを通して地域の問題解決のための仕組みづくりに注力しています。

TANOMOSHIへの参画背景

深刻な過疎高齢化が進む奥能登地域(珠洲市を含む)では、地域の産業や自治活動など様々な場面において、「次世代への承継」が急務の課題です。特にこのような地域では、後継人材が確保できずに経営者が高齢化、それに伴って廃業や、事業を縮小せざるをえない企業が相次いでいます。
前代表社員であった足袋抜さんが早くからこの危機感を感じ取っていたことから、ザ・アグラリアンテーブル合同会社における事業承継に着手することに。血縁関係への事業承継にはこだわらず、ここ数年を通じた従業員として積極的な働きぶりや、一緒に働くスタッフへの想いが強かった山口さんを評価し、次の代表社員として育てるべく、TANOMOSHIを通して「1.経営者人材の育成」「2.地域外からの人材確保」に取り組みました。

TANOMOSHIで取り組んだこと

1.経営者人材の育成

山口さんは、これまで木ノ浦ビレッジにおける宿泊や飲食などのを統括するマネージャーを務めていたものの、経営に関する知識や経験はほとんどありませんでした。そこで、興能信用金庫コーディネーターが山口さん向けに「財務講座」を実施したり、同じく1期ラボパートナーとして参画していた數馬嘉一郎さん(数馬酒造株式会社 代表取締役)が、山口さんの育成係のような役割を買って出て、経営に関するイロハの提示や、日々の経営相談に乗るなどのサポートを実施。また、他のラボパートナーからも、能登の地域性を活かした経営や、社内のマネジメント等について意見をもらうなど多方面からの刺激を受けながら、今後の事業計画立案や前任者からの引継ぎなど事業承継に向けた準備を進めました。当初、足袋抜さんは事業承継を完了するまでに2~3年ほどかかると見込んでいましたが、TANOMOSHIでの取り組みの結果、約1年という短期間での事業承継に成功しました。

2.地域外からの人材確保

山口さんが代表社員になるにあたって、これまで山口さんが担っていた役割を引き継げる人材が新たに必要でした。そこで、御祓川が提供する「中途人材採用支援プログラム」を活用して求人を行ったところ、学生時代に、(同社が運営する)能登留学を通じて七尾でのインターンを経験したことのある中途人材からエントリーがあり、奥能登地域外からの移住を伴う人材の採用に至りました。
※この時に採用した方は、諸事情により現在は退職しています。

山口侑香さんが考えるTANOMOSHIとは

「多様な人材の伴走機能が効果を上げる場」

山口さんの取り組みには、興能信用金庫コーディネーターや御祓川スタッフだけではなく、同じラボパートナーによる伴走支援も行われました。TANOMOSHIの場では、参画事業者同士の様々な助け合いが生まれましたが、ここでは「事業承継」をテーマにそれぞれ得意領域を持つ多様なステークホルダーからの伴走支援が集中し、1年間という短期間での事業承継に成功しました。
経営について「何が分からないかが分からない状態」から「具体的な問いを持てる状態」へと変化し、「やりたい」想いに対して必要となるコスト計算にも考えが及ぶまでに成長。木ノ浦ビレッジを「毎年、お客様が帰ってきたいと思えるような場所にしたい」という想いを、スタッフや銀行などのステークホルダーに丁寧に説明をして協力を得られるようにもなりました。
また、山口さんの今後のTANOMOSHIへの関わり方については、TANOMOSHIで受けた恩を次へとつないでいけるように、継続的に関わっていきたいという意向です。


コーディネーター

興能信用金庫
豊若 裕治


当初、経営者になるにあたって、財務に関する知識がほとんどなかった山口さん。これに対して金融マンの知見を活かして「財務勉強会」という連続講座を開講しました。マンツーマンで山口さんの指導にあたり、財務意識の醸成から経営者への道のりを手厚くサポート。財務計画を立てるにあたっては、当社の数字を見ながら、山口さんがこれから経営者として「自社をどのように育てていくのか」「何を大事にしながら数字と向き合っていきたいのか」という想いを丁寧に聞き取りながら、二人三脚で計画づくりを行いました。

佐久 志歩
株式会社御祓川
主担当 佐久 志歩


御祓川が運用する能登の人事部メニューのうち「中途人材採用支援」を行い、地域外からの人材採用をサポート。人材のマッチングにあたっては、これまで御祓川を通して能登に関わった経験を持つ”関係人口コミュニティ”から、中途人材の候補者を紹介するに至りました。マッチングを経た後は、定期・不定期で面談を実施し、人材のモチベーション管理や事業推進の壁打ちを行いました。
また、山口さんの成長過程に対するサポートとして、先述の経営者塾である「数馬塾」の前後での進捗管理や、山口さんが内容を咀嚼/整理するための振り返りワークの企画、また、山口さんが考案した事業計画や新規集客プランのブラッシュアップ等を行いました。これらを通じて、短期間に多様なステークホルダーから山口さんへ向けられたサポートをより効果的に活用できるよう支援していました。