能登ローカルビジネスラボTANOMOSHI〜はじまり〜

中間支援組織と休眠預金等活用法の存在

奥能登に本店をおく興能信用金庫で、当時、地域支援部部長だった現理事長の田代氏は、「持続可能な地域づくりには、その地の魅力を引き上げ、付加価値を向上させること、そしてそれを価値化し域外収入を安定的に増やすことが重要」と考えていました。

しかし、奥能登地域の大半を占める小規模事業者は、そうしたノウハウも、それを担える人材を育成するための経営資源も少なく、本来は、能登に豊富な一次産業資源のもと、域内にヒト・ モノ・カネ・情報を呼び込む可能性を秘めた製造業も小規模事業者が多く2次産業などの業種の付加価値・平均所得も高くはない状況でした。

こうした地域においては、事業者自身に最初から付加価値を上げるためのノウハウを求めるのではなく、地域自体にノウハウを醸成し・根付かせ、同時に適宜必要なところに届ける中間支援組織の存在が必要と感じていました。

地域全体の発展への貢献を担う地域支援部として、そんなことを田代氏が感じていたところに、信金中央金庫(信用金庫の中央金融機関)から休眠預金活用の話が舞い込んできました。休眠預金とは、10年以上お金の出し入れがなく、金融機関との取引がない状態の預金等をいい、金融庁によると、2014年から2016年度の休眠預金は、年間に1,200億円程度発生していて、そのうち500億円程度が預金者に払い戻しされている状況です。この忘れられたお金を社会課題の解決や民間公益活動に活用しようと始まったのが「休眠預金等活用法」です。


休眠預金活用の流れ
※janpia.or.jpに記載の図を一部改変
休眠預金を活用した事業シンボルマーク


興能信用金庫と(株)御祓川は、2019年12月に信金中央金庫と一般財団法人社会変革推進財団(理事長:大野修一、所在地:東京都港区)の間で締結されたパートナー協定のもと、同財団による休眠預金等活用法に基づく「地域活性化ソーシャルビジネス形成支援事業」の実行団体として採択され、TANOMOSHIの事業を実施しております。


地元の事業者同士をつなぐ

奥能登での休眠預金活用について考えてみないかと信金中央金庫から紹介された際に、田代氏は「人口減少が著しい奥能登地域で生まれる休眠預金は少なくないはず。これを、再び奥能登地域に持ってきて、地域の活力を産むために使うことはできないか。いや、地域の預金を預かる信用金庫にこそ、これを実現する使命があるのではないか。。」と、思ったそうです。

ただ、長年金融領域で活動してきた信用金庫がいきなり中間支援機能を担うとするには、まだリソースが不足しているとも感じていました。そこで、奥能登に隣接する七尾市で20年以上まちづくりに取り組んできた株式会社御祓川に、奥能登に中間支援機能を作りたい旨を相談しました。

相談を受けた御祓川の代表森山は、商工会議所や信用金庫がハブ役を担うなら納得が得られるが、七尾市で行ってきた活動をそのまま奥能登に取り入れると、「よそから来た一事業者が(自社や仲間の企業に)利益誘導している」ととられかねない。そこで、「地元の事業者同士をネットワークでつなぐことで中間支援機能をもたせてはどうか」と田代氏に提案しました。

それが、いま奥能登を中心に展開している『能登ローカルビジネスラボ TANOMOSHI』です。

 もとは奥能登地域の事業者が預けたお金も含まれるだろう休眠預金を原資に、
(1)経営者の学び合いの場づくり
(2)中間支援のためのコーディネーター育成
(3)事業者への伴走支援(外部人材マッチング、コーチング、 販路開拓等)
を実施しています。

体制としては、奥能登の各市町からそれぞれ 1 事業者を選抜し、興能信用金庫職員が主となり、 御祓川スタッフとともに 事業者の事業推進をサポートしています。

TANOMOSHI概要図
出典:SIIF 休眠預金事業インパクトレポート

開始から1年4ヶ月経過した今、見えること

休眠預金を原資とする、いわばTANOMOSHIのスタートアップ期間は2021年11月〜2023年3月の約2年半。この期間は、休眠預金を原資に、興能信用金庫と御祓川は、現地の事業者に対して中間支援機能を提供しています。また、興能信用金庫と御祓川自身も、休眠預金の資金分配団体である一般財団法人社会変革推進財団(以降SIIF)から、活動資金だけでなく、事業自体の作りあげ・継続性確立に向けた伴走支援を受けています。SIIFはもともと助成金などの投下による地域へのインパクトを重視するため、TANOMOSHI事業においても、興能信用金庫や御祓川の活動が地域に与えた影響をきちんと評価することまで徹底しています。事業全体として、評価にも重きが置かれるからこそ、振り返りと目標達成に向けて軌道修正を適宜行える状態になっています。

SIIFとの打ち合わせ

2022年4月時点で設立から1年4ヶ月が経過した今、1期1年とする第1期プログラムが修了し、現在第2期プログラムを実施中です。この短いトライアルの中で、ステークホルダー全員が模索しながら、奥能登の持続性を高めるための仕組みの構築を目指してきました。

そんな中、新たな兆しとして、地域に何か新たに組織を作らなくとも、地元事業者同士の繋がりあいが強化されることによって、地域に秘められた中間支援機能は自然と生まれてくることが実体験から見えてきました。具体的には、当初支援対象と位置付けていた事業者同士で自ら提案書を書き合ったり、現地まで行って励まし合ったり、互いの商品を売りあったりといったことが、想定以上のスピードで起きています。また、1期の修了生が、2期では御祓川とともに運営側に参画して、この地域に中間支援機能を息づかせる活動に邁進するように。。
今、興能信用金庫と御祓川は、まちづくり会社そのものを作るというよりは、この地域が自然と備えている中間支援機能が、奥能登において最大限に発揮されるような仕組みを作ることに着目して活動しています。

関連リンク

SIIF 休眠預金事業インパクトレポート(PDF)

休眠預金で奥能登にインパクトを生み出す|SIIF

休眠預金等活用とは|JANPIA