[第1期レビュー] 株式会社森本石油(有限会社クリエイト)

カテゴリー

  • 活動報告

1928年創業、穴水町にある地域密着型の小さな老舗ガソリンスタンド。昔ながらのフルサービスを売りとする給油、洗車やタイヤ交換などの基本的な軽整備を行います。ガソリンスタンドとしては珍しく、スタンドの待合室には、地元特産品を使った商品が所狭しと陳列されており、小さな道の駅さながらの雰囲気が特徴的。また、ガソリンスタンドという立地を生かして、スタンドに集まる地元住民のネットワークや情報を活用し、地元の特産品や未活用資源を使った商品開発をするなど、地域商社機能を担う有限会社クリエイト(以下、クリエイト)の運営もしています。

株式会社森本石油(有限会社クリエイト)
代表取締役    森本 敬一


地元・穴水町出身で、森本石油の4代目経営者。戦後経済復興で活躍した先々代の頃から、名家としての意識づけがあった一方、自身は「継業」に囚われない人生を望んでいました。米国留学を経験し現地企業での就職が決まっていた矢先、父から「蛙の子は蛙である」と告げられたことで”運命”を悟り、4代目を継業。現在は、前向きに経営者としての道を歩みつつ、クリエイトの事業を通して、愛する「食」の分野で商品プロデューサーとして活躍しています。

TANOMOSHIへの参画背景

自動車業界における脱炭素技術推進・エコ燃料への切り替えなど、ガソリンスタンドを取り巻く環境に大きな変化が訪れている中、さらに地方のガソリンスタンドでは、人口減少が経営難に拍車をかけています。この20年で国内のガソリンスタンド数は半分となり、省力化のためにセルフサービスに切り替えるところも増えてきました。森本石油では、「車なしには生活が成り立たない地方にありながら、地域の足を支える企業として持続経営していくことは、地域のライフラインを維持していくことに直結している」と考えています。

TANOMOSHI参画当初に行った現状整理を通じて、森本石油の持続経営には、「ガソリンスタンドに代わる売上の柱づくり」が喫緊課題であることが見えてきました。
そこでプログラム期間は、新しい売上の柱づくりのため、大学生インターン(以下、インターン生)および兼業人材を導入し、「1.地域商社機能(クリエイト)の強化」「2.経営マネジメント強化」に取り組みました。

TANOMOSHIで取り組んだこと

1.地域商社機能(有限会社クリエイト)の強化

御祓川が提供する「大学生インターン活用プログラム」と「兼業人材活用プログラム」を併用し、外部人材の投入によるクリエイトの経営強化を行いました。これまで主に自動車業界や商社のマーケティング分野で活躍してきた兼業者とは、リモート形式でクリエイトの事業計画を立案し、特に課題となっていた「自社商品の販売促進」に向けた打ち手を整理。
一方で、インターン生は現地滞在型で参画し、森本さんと日々膝を突き合わせながら、兼業者が考案した事業計画に則って、SNSでの日常的な発信や商談会/見本市への出展をはじめとする打ち手の実行を担いました。また、売上管理はノートに手書きする昔ながらのやり方を踏襲しており、昨年対比や利益率などを分析することも容易にできない状態でした。これらバックオフィスのDXも課題となっていたため、売上数字のデータ化や管理ツールの導入など運営の仕組みづくりにも取り組んだ結果、事業管理体制の改善に至りました。

2.経営マネジメント力強化

森本石油およびクリエイトの経営において、「タスクやスケジュール管理」「社内のマンネリ化」など、森本さんのマネジメント力強化もまた優先度の高い課題となっていました。そこでインターン生が、森本さんの特性に合わせてスケジュール管理ツールを導入したほか、ガソリンスタンドの現場に立つ中で社内スタッフの声を拾い上げ、解決すべき企業課題を客観的視点で見える化するなど、外部人材ならではの効果を発揮しました。

森本 敬一さんが考えるTANOMOSHIとは

「目的をもったチャレンジを支える仕組み」

目的を意識する以上に好きが高じて、商品開発を続けてきたクリエイト事業でしたが、今後の経営環境を鑑みると、クリエイト事業の位置づけの重大さに気が付きました。森本石油が地域のライフラインを支える企業であり続けることを目的に置いて、そのために「今、何をすべきか」を考えることができ、販売促進に課題があることも、TANOMOSHIを通して気づけたことです。また、チャレンジに向けて必要となる人的資源にも恵まれ、彼らから学んだこと・彼らが残してくれたことを、今後も当社の持続可能性のために続けていきたいと思っています。 森本石油の持続可能性を考える上では、森本さんの後継者人材も今後の課題となりますが、TANOMOSHI期間中に学生インターンやコーディネーターが頻繁に出入りし、森本さんと一緒に取り組んでいる姿を見て、「地方のガソリンスタンドでありながら様々な機会があり・挑戦できる場」だと感じた都内からの研修生が、事業継承を考えはじめてくれています。 今後のTANOMOSHIには、穴水町のことなら当社にお任せ!とばかりに、今後の参画事業者の選定や地域内での活動における助言・サポートを最大限していきたいという意向です。


コーディネーター

興能信用金庫
白井 克尚


地域支援部所属のコーディネーター。金融機関の強みを活かし、森本石油やクリエイトの経営分析を行いました。森本石油の営業担当職員とも連携をしながら、森本石油の現状や等身大の姿を理解すべく、情報収集に奔走、外からの情報と直接経営者に接する中で感じることや得た情報とを組み合わせて、複雑な経営状況の整理に尽力しました。また、クリエイト商品の販路拡大についても関連事業者に紹介する等の支援も行いました。

森山奈美
株式会社御祓川
主担当 森山 奈美


自社の外部人材活用メニュー(大学生インターン・兼業人材)における人材募集・マッチングを行い、人材が活動する間のモチベーション管理およびプロジェクトの進捗管理を行いました。地域内外を繋ぐ機関として、全国の家業承継コミュニティとのつなぎ役を果たしたほか、人材活用にかかる予算調達を支援しました。また、壁打ちを通して、森本さんの想いを言語化したり森本石油のビジョン構築を支援したりしたほか、クリエイト商品の販売促進においても、自社が運営するオンラインショップ「能登スタイルストア」でも取り扱うなど販路拡大も支援しました。