TANOMOSHI参加で見えた
地域金融機関のコーディネーター像

興能信用金庫
地域支援部部長田中 英春

興能信用金庫は、奥能登を拠点に地域密着型の金融サービスを提供しています。
TANOMOSHIでは約2年の間、地域支援部から常時4〜5名の職員が、地域コーディネーターとして地元事業者の伴走にあたりました。

TANOMOSHIへの参画が興能信用金庫にとってどのような効果をもたらしたのか、担当事業部部長の田中さんに伺いました。

今回コーディネーター(CD)を担った皆さんは、普段どのような業務をされていますか?

現在の信用金庫には、融資を中心とする金融支援以外にも様々な事業者支援が求められています。コロナ禍で外出自粛が叫ばれ対面販売の機会も激減するなかで、これまで観光関連事業を中心としてきた奥能登の事業者には、ビジネスモデルの転換やEC販売への急激な対応が求められました。

さらに、これからコロナ融資の返済が始まるタイミングにあって、これまでギリギリのところで耐えてきた高齢の零細事業者の多くが、今後も耐え抜けるかどうかとても危惧しています。私たち信用金庫は、地域の事業者あっての存在ですので、メインストリームの融資以外にも、あらゆる手段での地域の事業者支援をしていこうとしています。

もともと地域支援部は顧客支援と融資審査管理の2つの機能を担う部署でしたが、2021年3月より「地域支援部」として、融資を含む様々な手段を用いた顧客つまり地元事業者のサポートと、それを通じた地方創生を担う部署として独立しました。

普段の業務は、営業店職員が顧客から吸い上げてきた融資を含む情報、具体的には事業承継や創業・第二創業、販路開拓、各種補助金などの経営課題に対して、地域支援部職員が同行して詳細を伺い、必要あれば外部連携先に繋ぐことをしています。

融資以外の事業者支援アプローチとして地域支援部としてできるか模索しているなかで、一つのトライアルとして今回TANOMOSHIに取り組みました。

「地域支援部」として、どんな期待をもってTANOMOSHIを開始されたのですか?

上述の通り、地域支援部には融資以外からのアプローチとしての「よろず支援」ができるような人材が必要です。(相談を受けたらもちろん、相談として上がってこなくても)現状をもとに、全体を俯瞰したうえで「XXを一緒に考えましょう」などのテーマ立てをできるスキルが職員に必要です。

そういったファイナンス以外の支援機能を提供するには、一つの事象から、色々な見方ができる目線や、いつでも深く相談できる人や企業との繋がりが外部に必要です。これまでは県の事業者支援機関への年単位の出向などを通じて学ぶ機会としてきましたが、TANOMOSHIでのコーディネーターの役割を担うことで、奥能登の本部で実際の事業者支援を行いながら、そういった新しいスキルやネットワークを獲得できるOJT機会として期待していました。

また、プログラムのなかで地元事業者のチャレンジに伴走すると聞いていたので、コロナ禍の現状を打破するために新規事業が必要な事業者に対して、御祓川と一緒にその伴走に取り組むことで、新規事業伴走ノウハウを学ぶことを期待していました。

やってみての感想をお聞かせください。

得たもの

第一に、TANOMOSHIでの伴走を通じて築いた地元経営者(ラボパートナー)との信頼関係を、今後の本業や地域支援部の活動に生かしていきたいと思います。

現場職員にとって、実際に御祓川さんとともに「事業者の相談をきき、経営課題を整理して打ち手としての外部機関に繋ぐ」という一連のコーディネートを実体験する場数の一つになりました。信金では場数の多さ=経験がものを言いますので、これまでの通常業務にはない、こういった経験を実務を通じてできたことは、参加した職員の今後にとって大きいでしょう。

また、コーディネーターの基本スタンスとして御祓川さんからコーチングを学びましたが、職員の中には「相手の物の考え方に気づきを与える提案」ができるようになった者もいて、今後活きるスキルとなると思います。

難しかった点

TANOMOSHIでは、月次定例会3時間、翌週のコーディネーター会議2時間、翌月の月次定例会の合間の伴走数時間と、多くの時間が必要でした。地域支援部として他の業務があるなか、どう時間を作るか・どう少ない時間で成果を出すか、が取り組みにおける大きな課題でした。

しかし、逆に言うと、融資案件などの本業に繋げられるような関わり方をTANOMOSHIのなかでどう作るかを模索することも必要だったかと振り返ります。

御祓川から提供されるもので、役立ったもの・ツールはありますか?

CD会議

コーディネーターと御祓川スタッフだけで毎月2時間、事業者の伴走方針についてディスカッションする場がありました。一人で悩んだり決めうちするのではなく、多くの知恵を出し合って打ち手を決められる有意義な場でした。

CD評価

四半期に1回行われたコーディネーター本人とその上長、御祓川スタッフの3者で行う「コーディネーター評価」は、できなかったことの指摘というよりも、各職員が目指すコーディネーター像や伴走支援に対し、今後どんな取り組みを重ねることで近づいていくかという「現在地の把握と、目標をもとに、やることを決める」という、これまでの金庫の評価制度にはない取り組みもあり、学びでもありました。

なお、コーディネーター育成の取り組みを継続的に行うには、金庫の収益性に繋げる要素が不可欠なので、金庫の将来収益に繋ぐことを評価観点に加えるとよいと思います。

その他

コーディネート業務の1つである事業者の課題解決に資する外部人材マッチングを通じて少しではあるが金庫に収益をあげる実績もできました。

TANOMOSHIを始めたいと思う人へのメッセージをお願いします。

これまでのメインストリームを超えて非金融面からの支援も地域金融機関に求められる中で、組織の中に地域コーディネーターのスキルを持つことは必要と考えます。

ゼロから育成するには時間がかかりますが、すでに素養のある人を実業務を通じて育たり、あるいは、御祓川のような中間支援団体との連携によって、事業者を繋げられる支援メニューを拡充することができるという観点でTANOMOSHIへの参加は有効だと考えます。

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